大学の卒業論文や大学院での修士論文。避けては通れない最大の壁が「先行研究の調査と整理」です。
Google Scholarで検索しても、膨大な数の論文が出てきて途方に暮れたり、1本読むのに時間がかかりすぎて全然進まなかったり,そんな経験はありませんか?
実は、先行研究の調査には「明確な型」と「効率化のコツ」があります。これを知っているかどうかで、研究にかかる時間は数倍、あるいは数十倍変わってきます。
この記事では,多くの研究者や先輩のやり方を分析し、試行錯誤の末にたどり着いた「効率的な先行研究の調べ方・まとめ方」を紹介します!
研究したい分野のトレンドをまとめる
ここでは研究の初心者向けに,研究のスタート地点から紹介します!
自分の研究分野のトップジャーナルを調査する
先行研究調査でありがちな失敗が、Google Scholarで適当に出てきた論文を片っ端から読んでしまうことです。
論文自体はすぐに見つかりますが,「質の良い論文」か「権威のある論文」か分からないので,結果的に無駄な時間になってしまうことがあります。
効率的に質の高い先行研究を集めるためには、まず「自分の研究分野におけるトップジャーナルはどれか?」を知ることから始めましょう。
なぜトップジャーナルから探すのか?
- 信頼性が高い: 厳しい査読を勝ち抜いた論文ばかりなので、論理構成や手法のモデルになります。
- 最新のトレンドがわかる: その分野の最前線で何が議論されているかが一目でわかります。
- 「芋づる式」の起点になる: 質の高い論文には、必ず質の高い参考文献リストが載っています。
トップジャーナルの探し方
自分の分野の主要雑誌・ジャーナルを知らない場合は、以下の方法で調べてみましょう。
- 指導教員や先輩に聞く
-
「この分野でまずチェックすべき雑誌は何ですか?」と聞くのが最短ルートです。
- インパクトファクター(IF)を確認する
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その雑誌がどれだけ引用されているかを示す指標です。「分野名 + Impact Factor + Ranking」で検索すると、有力な雑誌のリストが出てきます。
- Journal Citation Reports (JCR)を活用する
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上に記載したインパクトファクターがまとめられているサイトです。
多くの大学が契約しているので,使えるかは「大学名 Journal Citation Reports」で検索してみましょう。
トップジャーナル内で論文を100〜200本程度まとめる
トップジャーナルを国内5誌、海外10誌ほどピックアップできたら、次は一気に「論文リスト」を作成していきます。
ここでの目的は、論文を熟読することではありません。「分野の全体像(地図)」と「検索キーワードの網羅」です。
なぜ「100〜200本」もリストアップするのか?
- 「そんなに多いの?」と驚くかもしれませんが、実はこの作業が最も重要です。
例えばあなたが「ESG投資」に興味がある場合、周辺には「CSR(企業の社会的責任)」「SDGs」「非財務情報開示」「インパクト投資」など、無数の関連キーワードが存在します。 - これらを最初に漏れなく押さえておかないと、後から「あっちのキーワードで検索すれば、もっと重要な論文があったのに…」と後悔することになります。
論文リストの作成方法(エクセル・スプレッドシート)
まずは、以下の項目を埋めるだけの作業に徹しましょう。1本あたり1〜2分で終わらせるイメージです。

- 論文のタイトル
- 著者
- 発行年
- ジャーナル名
- キーワード
- 概要
興味がある論文・キーワードを選定する
200本のリストが完成したら、自分の興味がある分野やキーワードに迫る論文をフィルタリング(絞り込み)していきます。
フィルタリングのやり方
- キーワードの重複チェック: リストを眺めていると何度も登場する単語に気づくはずです。これはこの分野における,ホット・重要なキーワードとなります。
- 興味がある論文に印をつける: 概要(Abstract)を眺め、「自分のやりたいことに近い」「手法が参考になりそう」と思ったものに星印(★)をつけていきます。
- 全く興味がない論文の取捨選択: 全く関係なさそうなものは、この時点で非表示にして構いません。
最終的に、このリストの中から精読すべき20〜30本を絞り込みます。
この「200本のリスト化 → 20本の精読」というステップを踏むことで、闇雲に読み始めるよりも圧倒的に解像度が高まり、論文執筆時の引用文献探しも劇的に楽になります。
論文の中には「Review」というラベルがつくようなリサーチ論文が存在します。
これは,この分野・テーマに関する過去数十年の研究を専門家が1冊にまとめ、整理してくれた論文のことです。
近年のトレンドがわかるので,合わせて探してみるのがおすすめです!
興味のある論文を精読する
200本のリストをフィルタリングして残った約20本の論文は,研究の土台となる内容になります。
しかし、20本すべてを隅から隅まで読み込んでいては,いくら時間があっても足りません。
ここでは,「提案された研究手法の肝」や「著者が認めた限界点」をまとめることが目的です!
選定した20〜30本の論文を読み込む
先ほど選定した20〜30本の論文を「別シートにコピーして」,以下の内容を追加します。
- 論文のタイトル
- 著者
- 発行年
- ジャーナル名
- キーワード
- 概要
- (追加)研究のオリジナリティ
- (追加)どのようなデータや分析手法を使っているか
- (追加)研究の結果
- (追加)著者自身が認めている「限界(Limitation)」点がなにか
なかなか論文を読むのが難しいという方もいるかもしれません。その場合は以下を意識すると読みやすくなります!
- 1回目(スキャン): タイトル・抄録(Abstract)・図表・結論だけを見る。
- 目的: その論文が自分の仮説とどう関係するかを最終確認する。
- 2回目(構造の把握): 序論(Introduction)と考察(Discussion)を読む。
- 目的: 「何が分かっていて、何が未解決なのか(Research Gap)」を特定する。
- 3回目(精読): 手法(Method)や分析結果の詳細を読み込む。
- 目的: 自分の研究で真似できる手法や、批判的に検討できるポイントを探す。
Google Scholarでトレンドの論文を追加で読み込む
トップジャーナルから選んだ20本の精読が終わると、この分野の大枠は90%くらい掴めています。
しかし、トップジャーナルに掲載されるまでには時間がかかるため、「今まさに議論されているホットなトピック」や,「ニッチな領域で評価されている重要論文」を見落としている可能性があります。
そこで,Google Scholarを使って少し論文を足していきます。
期間指定で「直近2〜3年」の動向を追う
Google Scholarでは検索条件を指定することができます。左側のメニューにある「期間指定」をフル活用しましょう。

エクセルシートに追加する
先ほどまとめておいたエクセルに,検索した中で興味がある論文を追加します。
Google Scholarでは被引用数が書かれているので,できるだけ多いものだけに絞ると良いです。
- 論文のタイトル
- 著者
- 発行年
- ジャーナル名
- キーワード
- 概要
- (追加)研究のオリジナリティ
- (追加)どのようなデータや分析手法を使っているか
- (追加)研究の結果
- (追加)著者自身が認めている「限界(Limitation)」点がなにか
「ベース論文」を1本に絞り込む
ここまでのステップで、興味のある論文が「トップジャーナルで20〜30本」,「最近のトレンドで10本」程度が揃っていると思います。
ここでは,まとめた中から自分の研究のベースとなる論文を1本、あるいは2本に絞り込みます。
「ベース論文」が決まると、論文の8割は完成する
「ベース論文」とは、研究のお手本であり、超えるべき論文のことです。
ベース論文が決まることで以下のようなメリットがあり,これから書く論文の8割程度が完成します。
- 問いの立て方を真似できる
- 分析の手法や理論枠組みを拝借できる
- その論文がやり残したこと(限界点)を、自分の研究の「新しさ」として主張できる
「ベース論文」を選ぶ3つの基準
なかなかベース論文が決まらない場合は,以下の条件に当てはまるものを選び出しましょう。
- 「問い」の重なり: 自分が解決したい問題と、その論文の問いが最も近い。
- 「手法」の再現性: その論文が使っているデータや分析方法を、自分でも(対象を変えるなどして)実行可能である。
- 「不満」がある: 「結論は面白いけど、このデータは古いな」「この視点が抜けているな」と、ツッコミを入れられるポイントがある。
これで,興味がある分野の全体像やベースとなる論文が整理できたので,研究を実際に始めることができます!
まとめ:先行研究の調べ方・まとめ方
「先行研究を100本以上調べる」と聞くと、最初のうちは気が遠くなるかもしれません・・
ですが,今回ご紹介したステップを踏めば、効率的に調べてまとめることができます!
先行研究をまとめる手順はこちら!
- トップジャーナルの特定:分野内で権威のある論文誌をまとめる
- トップジャーナル内で100〜200本リスト化:読むのではなく「データ化」して、周辺キーワードを網羅する。
- 興味のある20本の精読:先行研究の「限界点」を見つけ、自分の研究が入り込む隙間を探す。
- Google Scholarでトレンド補完:「被引用数」や「期間」で絞り込むことでトレンドを掴む。
- 「ベース論文」を1本決める:お手本となる1本を決め、自分の研究の型を固める。


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